6 馬喰のはなし

 むかし、馬喰して、すばらしい産をなした人いだったて。その人が、まず、日清戦争とか日露戦争とかで軍馬調達すっどき、ものすごく馬持ってで、政府さ高く売ってもうがった。ほんでその人の馬の買い方に問題があったって。
 どういう風にして馬買ったがていうど、農家の庭先さ行って、毎朝行って、
「馬見せてけらっしゃい」
 て、馬見に行ぐ。ほうすっど今まで活発に馬が尻尾(おっぽ)ふっていだな、ピターッと尻尾動がねぐなる。ほうすっどその馬喰曰く、
「これはデンピンていう病気で、尻尾動かさねぐなたんだら、まず時間の問題だ。たちまち死んでしまうんだ」
 んだどほれ、農家で、
「あらららら、さきだまで一生懸命尻尾ふってだな、パターッと尻尾ふらねぐなた。こりゃ馬のポックリ病みたいに来る病気だべがっす」
 ていうど、
「いやいや、ほだほだ。デンピン、伝染性貧血症ていう病気だ。ほれさかかるんだらはぁ、銭かけて捨てんなねぐなるんだて」
「ほんでは、安いったてええから持ってってけろ。何とかなんべがっす。お願いします」
 ていう。まず銭つけて呉るみたいなもんだったど。
 ほの、馬の尻尾動かさねぐする伝授があったて。ほいつは何だかていうど、針、馬の尻尾さすっど、見せてけらっしゃいていうたとき、知しゃねんたこめに(知らないでいるうちに)刺すんだって。んだど、ほれ、馬が尻尾動かすたんび痛いもんだから尻尾パタッと動かさねぐなるって。
「尻尾ふらねぐなた馬は、とにかく分んねはぁ」
 ていうたて。ほうして安く買っては高く売ったもんだから、すばらしくもうげだったて。
 どんぴんからりん、すっからりん。
>>和尚と天狗 目次へ