団子どの

 むかし、あるところに、神信心なじいちゃんとばぁちゃんいだんだけどなぁ。ほうして、ある時、二十四日が地蔵さまの日だから、団子こしゃえて、上げんべなぁて、じいちゃんとばぁちゃん、一生懸命、トンカパンカ、トンカパンカと粉はたいて、ほして団子煮て上げんべと思ったれば、団子一つ土さ落っで、コロコロ、コロコロ転んで行ったど。ほうしたれば、
    団子どの 団子どの どこまでござる
    孔の中の地蔵堂まで
 て、団子転んで行ったって。ほして追っかけて行ったって。ほしたれば土だらけになったから、
「お地蔵さま、ここにも立ってござるんだな。んだれば煮ねったて、土だけほろって、地蔵さまさ上げて」
 て、まず拝んだって。ほして、地蔵さま言うには、
「晩げ、ござっしゃい。晩げ来たごんだら、鬼だち博奕(ばくち)ぶちに来る。地蔵さまのお堂によ。んだがら、おれの言う通りにしていろ」
 てだど。ほして「んだか」て言うて、じんつぁま、丑満の刻行ってみたれば、まず地蔵さま、「膝さ上がれ」て言ったって。
「膝なの、もったいなくて上がらんね」
「んだげんど、ほだごと言(や)ねで上がれ」
 と。ほしてこんど、「肩さ上がれ」
「とんでもない、膝さも上がらんねに、肩さなの上がらんね」
 ほしたれば、
「いや、ほう言(や)ねで、肩さ上がれ」
 こんど、「頭さ上がれ」「頭さなの、ほれこそもったいなくて上がらんね」
「ほだごど言(や)ねで、上がって、おれの言う通りにすろ」て、地蔵さま言うんだって。ほしてこんど、
「頭さ上がって、屋根裏さ隠れろ」
 て言うたって。ほして屋根裏さ隠っじゃれば、赤鬼、青鬼いっぱい来て、博奕打ち始めたど。丁半はじめだんだど。ほうしてこんど、
「丁半はじめたから、黙って見てろ。おれがケケコクーて、一番鶏鳴く、二番鶏鳴いて、三番鶏鳴くど、鬼だ帰って行んから、ほれまで我慢して、屋根裏に隠っでいろ」
 ほうしたれば、一番鶏、ケケコクーて鳴いた。二番鶏、ケケコクーて鳴いた。こんど三番鶏、ケケコクーて鳴いた。
「ああ、三番鶏鳴いた。こんど夜上がりだぁ、夜上がりだぁ」
 て、鬼たち、銭いっぱい、みな置いて、ほして逃げて行ってしまったど。
「じさま、じさま、この金みな持ってこい。ほしてお前、家さ持って行げ。はいつだって、お前が神信心するおかげだから、銭みな持って行げ」
 と、こんど、屋根裏から、地蔵さまの頭さあがって、肩さ上がって、膝さ上がって降っで来て、先祖詣りして、ほして金もらって来て、じんちゃとばんちゃ、いつも楽々暮らしたけど。
 んだから、神信心というものは、いかなる時だて、いつだって、神信心して悪いていうことはないから、神信心はしなさい。
>>お婆の手ん箱(一) 目次へ