16 桃太郎

  むがしあったけど。
 あるどさなー。爺いど婆んばいだけど。二人 (したり) ぁ子供いねぁおんだはげぁぇ、な んとが子供授げでころて、何時 (いっつ) も神さまさ祈ったけど。んでも、授けてもらいか ねぁでいでぁったど。
 爺ど婆んば、田ど畑持ていだおんだはげぁぇ、毎日田や畑の仕事していでぁっ たど。んでも、薪もねぁば駄目だおんださげぁぇ、爺 (ず) ぁ田や畑仕事の暇だ時 (づぎ) ぁ、 何時でも山さ薪伐りん行ぐなであったど。
 ある時、爺ぁ暇出来 (げ) たおんださげぁぇ、薪でも伐てくんべていうなで、山さ行 たど。ほうして、薪んなるよた木さがしったら、向うの方さ、なんだが桃の恰好 しったおのぁ成ってだど。ほんで爺ぁ、何だべど思 (も) て行てみだど。ほしたばやっ ぱり桃だけど。んでも、大っきおんで、大っきおんで、爺ぁたまげでしまたけど は。
 爺いなのまだ見だごどのねぁ大っき桃で、ほれさ色も赤ぐなて食い頃だし、こ れぁ取てえて、婆んばど二人 (したり) で食うべ。なんぼがんめぁんだがて、ほの桃取っど 思たら、重でぁおんで重でぁおんで、爺ぁようよう取たど。ほうして、持てえた荷繩 (にんな) で、ほれ、よっこらさっと背負 (しよ) て、家さ行たけど。
 ほうして、家さ持て行て、婆んばどさ見 (め) へだら、婆んばもたまげでしまて、眼 (まなぐ) 大っきぐしったけど。ほうして、爺ぁ、
「婆んば婆んば。この桃切 (はやし) てみっちゃ。色もええし、なんぼがんめぁんだが」
 て言 (ゆ) たば、婆んばも、
「んだな爺い。これだばんめぁんだな。んでぁ包丁 (ほえじょ) 持てきて切 (はやし) てみっが」
 て、婆んば水屋 (みじや) がら包丁持てきて、ほの桃切すべど思 (も) て、包丁当でだど。ほし たら包丁当でだばんで、ばがっと真中がら二 (したっ) つん割っで、中がら、
「おげぁぇ、おげぁぇ」て、男おぼごぁ出はてきたけど。爺いど婆んば、どでし て、腰抜がすどごであったど。爺ぁたまげで、
「あらあらっ。桃がらおぼごぁ生っできたちゃは、まずまずたまげだごどもある おんだ」
 ていうけど。ほんで婆んばも、
「ほんてんたまげたな爺い。こんげたまげるごどもねぁおん」
 て、二人あたまげでは見っだけど。ほのうづん、婆んば、
「なー爺い。おらだ子供いねぁくて、神さまさ、欲し欲して願ていだはげぁぇ、 神さま授げでくっだなんねぁべが」て言 (ゆ) たば、爺ぁ、
「んだな婆んば、きっと神さま授げでくっだぁだべ。えがったえがった」
 て、二人ぁ喜でだけど。ほんで婆んば、
「んでぁ爺い。まず、名前つけねぁんねぁべ。ないてつけるやは」
 て言 (ゆ) たば、爺ぁ、
「んだなー。んでぁ桃がら生っだあだおん。桃太郎どでもつけんべ」
 て言たば、婆んばも、
「んだな爺い。ほれぁええ名前だ」
 て、ほのおぼごさ、桃太郎ど名前つけで、大事んして育ででいだけど。
 ほのおぼごぁ、成長 (おがんな) も早えども、先ず荒れぁおんで、えんつこさ入 (へ) で育ででい だども、誕生 (むげあえ) 日 (どぎ) ぁこねぁうづ歩 (あり) ぐよんなて、誕生日ぁ過ぎだば、えんつこのし上 げるよんなたげどは。
 ほうゆうおんだはげぁぇ、十位あなっど、ほごら近所のわらすたづぁ相撲とた て、かなうおのあいねぁぐなたけどは。ほうして、十二、三んなたば、爺ぁ田打 (ぶ) ち してっど田打手伝い、畑してっど畑仕事手伝て、働ぐよんなたけど。
 ほのあだり(その頃)、ほの村がら二里ばり離っだ山奥に鬼ぁいで、城築でいだ けど。ほうして、時々あだりの村々さ出はて来て、百姓達 (だ) がら米は取て行ぐ、野 菜は盗 (と) てえぐで、ひでーおんでぁったど。ほうして、あぐのはでにぁ、娘こだど ごまでさらて行ぐがったど。んだおんださげぁぇ、村々の人 (し) 達 (だづ) ぁ、困て困て、殿 さまさ退治してころて頼だども、殿さま退治へねぁくていでぁったど。
 桃太郎ぁ、ほれ見でるおんだはげぁぇ、何時が退治してくんねぁんねど思 (も) てい であったど。ほうして、十七、八んなっど、爺いど婆んばどさ、どうが鬼退治ん 行がへてころて頼だど。んでも爺いど婆んば、待で待で、お前の年でぁ、まだ早 えぁ。鬼こだに食っでしまうばんだはげぁぇ、もう二、三年あどにするて行がへ ねがったど。
 ほうして、桃太郎ぁ二十才 (はだづ) んなっど、まだ爺いと婆んばどさ、今度大丈夫だ、 今度ぁ鬼こあぁだ何十匹いだて負げねぁはげぁぇ、どうが鬼退治さへでころて、 頼だど。ほんで爺いど婆んばも、今度だば大丈夫だべ、んでぁ行てこえて、許し てくっだけど。
 ほんで爺いと婆んば、んでぁ黍 (きみ) 団子こしぇぁでやっさげぁぇて二人 (したり) して黍団子 こしぇぁでくっだけど。桃太郎ぁ、ほの黍団子風呂敷 (ふるしき) さ入っで、ほれ背負て、大っ き刀差して、鉢巻きして出がげだど。
 ほうして、山越え山越え行たば、向うがらわんわんて犬ぁ来たけど。ほうして、 桃太郎ぁそばさ来て、
「桃太郎さん、桃太郎さん。どごまで行くなです」て聞ぐけど。桃太郎ぁ、
「鬼の城さ鬼退治ん行ぐなだ」て言 (ゆ) たば、
「んでぁ背中 (へなか) さ背負ったおのぁなんですや」
 て聞ぐおんだはげぁぇ、桃太郎ぁ、
「これぁ一 (しと) づ食うど、力倍 (べあえ) んなる黍 (きみ) 団子だ」
 て教へだけど。ほうしたば、犬ぁ、
「んだら、俺ぁどさもくんねが。俺も鬼退治ん行ぐはげ」つけど。ほんで桃太郎ぁ、
「んだが、んでぁくんねぁんねべ。ほらっ」
 ていうど、背負てだ黍団子一づくっだど。ほしたば犬ぁ、
「あー、これぁんめぁぇ。なるほどこの黍団子食たば、力倍んなたよだ」
 て、手足伸ばしったけど。
 ほうして、桃太郎ど犬ぁ、ずうっと行たば、今度ぁ猿ぁ出はてきたけど。ほう して、きゃっきゃってゆいながら、
「桃太郎さん。桃太郎さん。どごまで行くなですや」
 て聞ぐけど。ほんで桃太郎ぁ、
「鬼の城さ鬼退治ん行ぐなだ」て言 (ゆ) たば、猿ぁ、
「背中さ背負ったおのぁ、なんですや」ていうはげぁぇ、
「これぁ、一づ食うど力倍んなる黍団子だ」て言 (ゆ) たど。ほしたば猿ぁ、
「ほう。ほれぁええおんだな。んでぁ俺ぁどさも一づ食 (か) へねぁが」
 つけど。ほんで桃太郎ぁ、
「んだが、んだが」て、一づ食 (か) へだど。ほしたば猿ぁ、
「あー、んめぁぇ、んめぁぇ」て、ほの黍団子食いながら連 (つ) で行たけど。
 ほうして、桃太郎ぁ、犬と猿ぁどご連 (つ) で、山越え山越え行たど。ほしたば今度ぁ、 ばだばだっと音 (おど) して、雉ぁ飛で来たけど。ほうして桃太郎ぁ前 (めあえ) さ下りで、
「桃太郎さん桃太郎さん、どさ行ぎぁすや」て聞ぐけど。桃太郎ぁ、
「鬼退治ん行ぐなだ」て言 (ゆ) たば、
「んでぁ、ほの背中さ背負ったおのぁ、なんですや」
 て聞ぐけど。ほんで桃太郎ぁ、
「あー。これが、これぁ一づ食うど、力倍 (べあえ) んなる黍団子だ」て言たば、
「ほんげぁぇええおのだば、俺ぁどさも一づ呉んねぁが。俺も鬼退治ん行ぐは げぁぇ」
 つけど。ほんで、雉ぁどさも一づ食へだど。
 ほうして、まだ犬ど猿ど雉ぁどご連 (つ) で、桃太郎ぁ、山越え山越え行たば、向う さ城ぁ見っけど。ほうすっど雉ぁ、
「先ず、俺ぁ行て見でくる」
 ていうど、ばだばだ飛 (と) で行 (え) て、城のあだりぐるぐるど廻て見で、帰 (けあ) えて来たけ ど。ほうして桃太郎さ、
「今だば、門番の鬼ぁ二匹はんていねぁけ。あどぁ、あっちゃこっちゃ昼寝しっ たはげぁぇ、丁度え。俺ぁ、まだ飛で行て、門番どごやっつけで、中がら門開げっ さげぁぇ、直ぐ来てころ」
 ていうど、まだばだばだど飛で行たけど。
 ほんで桃太郎ぁ、犬ど猿あどご連で、直ぐ門どさ行たば、中で、
「痛でぁ痛でぁ、あー、眼つぶさっだは」
 て叫 (さ) がぶ声ぁしたけど。ほうすっど中がら門の扉、雉ぁ、ぎぎーっと開げだけ ど。桃太郎ぁ、
「ほら、行ごっ」
 ていうど、皆走して行たど。
 ほしたば、ほのもの音聞で他の鬼だぁ、皆目醒まして、金棒かづで、門の方さ 走して来たけど。ほしたば、犬ぁ鬼達 (だ) の足だもええぁ、手だもけっつだもかまわ ねぁで、牙むえでかって歩たど。ほうして、猿ぁひっかぐんだが、雉ぁつづぐん だがして暴っだおんだはげぁぇ、鬼ぁだ、痛でぁ痛でぁとて、ただ逃げ走して歩 ぐばんだけど。桃太郎ぁ、ほんたおのさかまわねぁで、奥の方さ行たば、鬼の大 将ぁ、赤げぁぇ顔 (つら) して走して来たけど。ほんで桃太郎ど一騎打づんなたけど。ん だて桃太郎ぁ強 (つ) えおんだおん。鬼の大将ぁ、はーはーして息きらしては、
「降参です。降参です」
 て、手つえで謝たけどは。ほんで桃太郎ぁ、
「きさまらのようにえぐねぁ奴らいねぁ。城さ火つけで焼えでしまうはげぁぇ、 どさだりけづかれ」
 て言 (ゆ) たど。ほうして、城の宝物みな分取て、犬ど猿ど雉ぁどさ背負わへで、城 さ火つけで焼き払て、帰えて来たけど。とんぴんからんこぁねぁっけどは。
(話者 高橋タケヨ)
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