9 猿と蛙の寄合餅 

 猿と蛙(びっき)ぁ、集まっていたどこさ、どっかの家で餅搗き始めたど。蛙(びっき)ぁ食いだくて、
「何とかして食いだいから…」
 て、二人で相談してたば、その蛙ぁ
、 「池の中さ入って、おぼこの泣き真似しろ」
 て、猿が教えたど。そうすっど、蛙ぁ池さ入って、赤子の泣き真似したじだな。 オギァオギァて。そうすっじど、家の人ぁ魂消て、子どもぁ池さ入ったちゅうわけで、皆飛び出はって行った。そうすっど、その猿がその留守に臼を背負って、そして出掛けたなだど。猿ぁ背負って行く、蛙は出はって来る。家の人ぁ大騒ぎして、してはぁ、猿ぁ臼を背負って、山さエンコエンコと登ってしまった。そうすっど、蛙が後から、ピタリピタリと登って行って、分けろて言うたげんども、猿ぁ欲ふかいもんだから、分けないで、
「一番高い山から転がして行って、一番と付いて行った人が勝ちだ」
 て言うたって。そしてその山から登って行って転がしたって。して転がして行くと、その猿が、そさ喰付いてはぁ、下まで走って行ったど。そうすっど走って行って見たげんども、その臼ささっぱり入っていねがったって、蛙は下からピタンピタンと登って行ったらば、途中さその餅がいっぱい引掛っていて、して、蛙ばり食っていたどころさ、猿来たわけだ。猿は「少し分けてけろ」て言うたげんども、「分けらんね」て言うたって。
「あの、誰でも先に拾った人が勝ちだから、分けらんね」
 て、そんでも分けろ分けろて言うもんだから、聞かなくて、蛙がごしゃえで、猿のどさぶっつけて、顔さぶっつけてはぁ、今でも猿の顔、そんじぇ赤くなったごんだ。とーぴったり。
(高橋うめの)
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