71 酒田の本間さま(1)

 むかしから、あんな大旦那さまでながったのだど。朝げ早く起きて川杭拾いに行ったごんだど。そうしたところが、何か川杭さ引っかかっていだものあっずもの。なんだべと思って、杭さ引っかかっていたものあるし、見たらば、縞の財布のようなものだずもの。それから拾い上げてみたらば、ずっしり重たいなたもの。そうして開けてみたらば、お金いっぱい入っていたずもの。これは何者落したか、流したか知しゃねぇど思って、時の代官所さ届けたごんだど。そして落した、無くしたという者、近所にいねがったずもの。そして、
「お前は、朝起きの、授かりもんだから、お前にやる。落し主ないから」
 て、もらったために、その百両の金で、ほうぼうの荒れた田地を起すやら、買い集めるやらして、酒田の本間さまは、あれだけの身代になったなだど。どーびん。


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