どんずやりにぁ切りがない


 むかし、どんずやりいだったど。
 あんまり稼がねほで、家のオッカからヤキメシ一つ握ってもらって、そいつを 背負わせらっで、ぼだしてやらっだど。
 そして行ったげんど、頸からヤキメシとって食うのが大変だったもんだから、腹ぁ減っても取って食うやんだくて、かまわず歩いて行ったど。そしたらば、笠 かぶった男は口あいて来たったど。
「あのやつは、腹減って来たんだから、もしオレのヤキメシ、オレの頸からとっ てもらって、半分くれてやれば、半分は自分が食えっから…」て、あの野郎 (やろ) だま して頸からヤキメシとってもらうべと思ったど。そして、
「オレの頸にヤキメシあっから、取ったら半分、お前さやっから」て云うたら、
「いや、はいっづげな、人のことなどしてらんね、オレぁ笠の紐ゆるんで、仕様 (しよ) な いげんども結ぶ (つなぐ) のやんだくて、口あいてこうして来たんだ」て云うたど。
どんずやりにぁ切りがないもんだど。トービント。
(貝生 工藤六兵衛)
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