かわうそと狐(二)

 かわうそど出会って、
「オレに何かごちそうすねが」て狐ぁ云うたど。
「あまえ、ええ、その代り明日の晩げごちそうこしゃえでおぐから」て、かわう そは寒い朝に川さ入って尻尾入っでで、鮎だの鮒だのとって来て、狐ば待ってだ ど。そこさ狐ぁ来て、
「大したごちそうだ。ほんでは明日オレぁごちそうすっから」て云うて、
「なじょして、こいつとった」て聞いたれば、かわうそは、
「寒い夜、尻尾ば川さ入っておくど、さまざまな雑魚ぁ来て、尻尾さ喰 (く) っつくか ら、そんどき尻尾上げっど、雑魚ぁいっぱいとれる」て云うたど。
 狐は早速、一晩川さ尻尾たれっだら、尻尾ぁ凍 (し) みで、引張り上げんべと思って も引張り上がんねぐなって、
「少々の小雑魚は逃げても、ええ」て一生懸命ひっぱったら、尻尾はボギッーて もげてしまったど。トービント。
(中山 山川嘉之助)
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